あたたかな日差しの中、取り留めのない話をしながら歩くふたつの影。

 買い出しの帰り道、タリウスは偶然ユリアと遭遇した。もちろん、彼の小さな弟分も
行きたいと主張したが、人の多い時間だからと今は留守番を言い付かっている。

「そう言えば、シェールくんの怖いもの、何だか知っていますか」

 唐突に話を振られ、タリウスは視線を上げる。

「雷…かな」

 つい先日も、次第に近付いて来る轟音に弟が激しく怯えていたのを思い出した。

「正解です。でも、あとふたつあるんですよ」

「他に怖いものね…」

 タリウスはもう一度、普段の弟の様子を振り返る。彼が不安がるのは、大抵が夜であ
る。

「暗がり…。ああ、オバケだ」

「流石お兄さん、よくご存じですね」

「いや、あとのひとつは見当も付かない」

 降参です、とタリウス。

「じゃあ宿題にしますね」

「教えてくれないんですか?」

 てっきり答えが聞けると思っていた。タリウスは首をひねる。

「嫌いなものでしょう」

「違います。恐いものです」

「同じでしょうよ」

「全然違いますって」

 弟は雷もオバケも大嫌いである。益々わからなくなってきた。

「正解は、本人の口から聞くとしよう」

 角を曲がれば、すぐそこが宿屋である。

「だめです、宿題は自分でやらないと。というか、絶対言わないと思いますよ」

 家路へ急ぐタリウスを慌ててユリアが引き止める。

「何故?」

「それは…言えません」

 では、とユリアは含み笑いを浮かべ一足先に宿屋へ入ってしまう。相変わらずよくわか
らないひとだとタリウスは溜め息をこぼした。