ある日の明け方、タリウスは物音で目を覚ました。見れば、小さな弟が部屋の隅で何やら不自然な動きをしている。

「シェール、どうした?」

「な、なんでもない!」

 その答えに、即座に何かあると確信した。

「何でもないなら、早くベッドへ戻りなさい」

 しかし、シェールは一向に動こうとしない。仕方なくタリウスは立ち上がって弟の側へ寄った。

「どうしたんだ?」

「僕、あの…その…」

「うん?」

「ごめんなさい!」

 シェールが半泣きで謝るも、タリウスには何がなんだか理解出来ない。

「ちゃんと話してくれなければわからない」

「んーと…」

 シェールは背伸びをして、そっと兄へ耳打ちする。

「ああ…」

 タリウスは耳元で弟の告白を聞き、思わず苦笑いを浮かべた。

「お前はまだこどもなんだから、そういうことだってあるよ」

 弟は羞恥からか目を伏せる。

「怒らない?」

「お望みとあらば、いくらだってお尻をぶつが」

「やだ!いらない!」

「だったら、早く着替えなさい。それから一緒に寝よう」

「良いの?」

 その百面相に彼は声を殺して笑うのだった。


〜Fin〜 2010.9.2