「どうしたんだ、そのお菓子は」

 帰宅した弟を見てぎょっとする。彼は両手に山盛りのお菓子を抱えていた。

「ミルズ先生にもらった」

「ちゃんとお礼を言っただろうな」

 後々嫌味を言われるのは他ならぬ自分である。

「うん。僕、ミルズ先生のこと、すごい好き」

「そりゃそんだけ可愛がってもらっているんだ、そうだろうよ。先生がお前を怒るところを想像できないよ」

「へ、でも…。お尻ぶたれたことあるよ?」

 弟の言葉に目が点になる。

「ななな、何をしたんだ?!」

「んーーー」

「先生に叱られたのなら、俺はもう責めないから」

 良いから言えと促す。

「コップにトカゲを入れたら、ミゼットがびっくりして、お茶がかかって、ちょっと火傷した」

「しぇーるぅ」

 恩師にとって、彼女がいかなる存在なのか充分すぎるほど理解していた。それ故、目の前が真っ暗になった。

「でもね」

「何だ?」

「お仕置き、あんまり痛くなかったんだよ」

 のんびりとのたまう弟を前に、タリウスはがっくりと肩を落とした。このとんでもない不始末を詫びるべきか、このまま知らぬふりを続けるか。答えは一向に出なかった。


〜Fin〜 2010.7.15 「悲鳴」の後で ネタ協力ありがとう!な、におさまに捧ぐ♪