「ごめんなさい。内緒にするって約束したのに、僕…」
翌朝、シェールはひとり隣人を訪ねた。いくらミゼットの頼みとはいえ、いとも簡単に自分はユリアを裏切ったのだ。良心が痛まない筈がなかった。
「いいのよ、もう」
「でも、とうさんに怒られなかった?」
「怒られたわ。もう大目玉よ」
「やっぱり!」
嫌な予感が的中した。シェールはまるで自分のことのように胸が苦しくなった。
「怖かった?本当にごめんね」
「いいのよ。私を心配して話してくれたのでしょう?それに、シェールくんが話してくれなかったら、タリウスに見つけてもらえなかったんだもの。反対に感謝しているわ」
「ならいいけど」
ユリアの言葉に救われる思いがしたのも束の間、続く台詞にシェールは絶句した。
「信じられないくらい怖かったけれどね」
「だよね…」
あればかりは体験した者にしかわからない。シェールは心から隣人に同情した。
〜Fin〜 2020.6.13 「守護」の翌朝から。
ユリアと結婚したところで、こどもがひとり増えるだけのような予感…