「ねえ新聞っておもしろい?」
「別段おもしろくはないな」
「じゃあなんでいっつも読んでるの?」
「そうだな、世の中の動きを知りたいからだ」
言って、タリウスは新聞のページをめくった。傍で寝転んでいたシェールもまた所在がなくなり、父の広げた新聞を覗き込んだ。窃盗、詐欺に殺人と物騒な単語ばかりが目に付いた。確かにこれでは面白くない。
「いいか、シェール。この際だから言っておくが、公安の世話になるようなことだけはするな。万一そんなことをした日には…」
「親子の縁を切る?」
「いや、親子になったことを後悔させてやる」
「………は?」
それまでの挑戦的な顔つきから一転して、途端にシェールが色を失った。
「だだだ、大丈夫だよ。そんなことしないから」
「そうか、なら良いが」
どきまぎするシェールを尻目に、何事もなかったように、タリウスは再び新聞に目を落とした。
「お前が何をしようが、とうさんはお前のとうさんだ」
〜Fin〜 2013.2.20