「タリウス。ねえ、タリウス起きて」

 聞き覚えのある懐かしい声に薄眼を開ける。

「エレイン?!何で?」

「これは夢だから。細かいことは気にしないで」

 そう言って笑う姿は違うことなく旧友エレインである。心がじんわりとあたたかくなる。

「そうか、わかった」

「あはは。あなた、随分変わったわね。昔だったら意味がわからないって怒ったと思うけど」

「なんせ鍛えられたからな、おぼっちゃまに」

 シェールの突飛で理解不能な行動は母親の上を行く。いちいち目くじらを立てていたらやっていけない。

「そうそう、そのお礼を言いに来たのよ。ありがとうなんて言葉じゃ全然足らないと思うんだけど、どうもありがとう」

「それを言いにわざわざ?」

「ええ。あの子のことが心配でたまらなくて、と思いきやそうでもなくてね。あなたがついているならこの上なく安心だわ」

 あと何年かよろしくね、笑いながらそう頼まれて、図々しいのは死んでからも同じかと呆れた。


〜Fin〜 恐らく一番掲載期間が長かったのがこれ